セレストロンC8 SCT OTA CG5のインプレッション
セレストロンC8 SCT OTA CG((以下「セレストロンC8」)は、セレストロン社が製造している口径203㎜(8インチ)、焦点距離2032㎜のシュミットカセグレン式天体望遠鏡です。
セレストロンC8は、惑星や月から星雲・星団の観察までオールマイティに使用できるため、天文ファンに人気の高い鏡筒です。今回は、セレストロンC8の使い勝手や使用感についてご紹介します。
コンパクトなシュミットカセグレン式天体望遠鏡
セレストロンC8の光学系には、シュミットカセグレン式(正確には、コンパクト・シュミットカセグレン式)が採用されています。
鏡筒の底部には、光を集める主鏡(凹面鏡)が取り付けられています。主鏡で集められた星の光は、筒先にある副鏡(凸面鏡)で反射し、接眼部に導かれますが、この2つの鏡は球面鏡のため、諸収差が発生します。この収差を補正するため、筒先にシュミット補正板が取り付けられています。
シュミットカセグレン式は、同口径の20センチニュートン反射式と比べると、筒長を短くできる点がメリットです。下画像は、同じ口径のニュートン式反射(F6)と並べた写真ですが、長さの違いがよくわかります。
セレストロンC8はコンパクトなため、鏡筒本体重量も約5.7キロと軽量です。自宅だけでなく、キャンプ場などにも持ち運びやすい望遠鏡です。女性でも気軽に持ち運ぶことができるでしょう。
セレストロンC8の使い勝手
セレストロンC8は、コンパクトで軽いだけでなく、使い勝手も良好です。
望遠鏡の底部には、架台に載せるためのアリガタ金具が固定されており、鏡筒バンドを別途購入する必要はありません。購入してすぐにアリミゾ台座が設けられた赤道儀や経緯台に載せて使用することができます。
鏡筒の底部には、持ち手が取り付けられています。ちょっとしたことですが、持ち手があると、安心して持ち運び、架台に載せることができます。
セレストロンC8のピント合わせ機構には、主鏡を前後に動かす方式が採用されています。本格的な天体撮影では、ミラーシフトが生じる場合があり、この方式を避ける方もいますが、初心者にとってはピント合わせのイメージがしやすく、操作しやすいでしょう。
大口径で楽しむ天体観望の世界
口径20センチは、大口径天体望遠鏡の入り口です。肉眼の 841 倍の集光力は素晴らしく、口径8センチや10センチとは明らかに異なる世界が広がります。
夜空の綺麗な場所での天体観望では、小口径とは集光力に大きな違いを感じます。小口径では見えづらかった系外銀河の腕もよりはっきりと見えますし、小口径ではそもそも見えなかった天体の姿を確認することもできます。
都会での天体観望で人気の高い木星や土星について、同じ倍率の小口径と比べると、覗いた瞬間、像が明るいと感じます。倍率を上げれば、木星の縞模様も小口径より詳細に見えますし、土星の環にあるカッシーニの隙間もよりはっきり見えます。
上の写真は、セレストロンC8とZWO社のCMOSカメラで撮影したものです。惑星の撮影では、コンパクトで大口径を得られるセレストロンのシュミカセシリーズの人気は高いです。
天体撮影や電視観望にも使用可能
セレストロンC8にオプションのTアダプターとカメラマウントを取り付ければ、天体撮影や電視観望を楽しむことも可能です。
さらに、オプションの「レデューサー 0.63x SCT用」を使用すると、像面湾曲が改善され、焦点距離も0.63倍に短縮され、F値も10から6.3と明るくなり、天体撮影や電視観望に使いやすいでしょう。
上は、私が以前、所有していた、ミード社の同口径の20センチのシュミットカセグレン望遠鏡にレデューサー0.63xを使用して撮影した、子持ち銀河の写真です。渦を巻いた銀河が明瞭に写っています。
電視観望では、F値が暗いため露光時間がかかりますが、逆に焦点距離の長さを生かして、明るく小さな惑星状星雲を撮ると面白いと思います。
なお、天体撮影メインでシュミットカセグレン式望遠鏡をお探しなら、補正レンズを最初から組み込んだ、同社のEdgeHDシリーズもあります。EdgeHDシリーズなら、ミラーシフトを防止するミラークラッチ機構も搭載されています。
まとめ
オレンジ色のセレストロンC8が日本市場に初めて登場した時、「大口径なのにコンパクト!」と天文ファンの注目を集めました。それから30年以上経ち、光学系に目新しさは感じられませんが、大口径の入り口として依然として人気の高い、定番とも言える鏡筒です。私も今回、久しぶりにセレストロンC8を使用して、改めて使いやすい望遠鏡だと感じました。
セレストロンC8の魅力は手軽な大口径です。小口径からステップアップしたい初中級者の方だけでなく、ベテランの方にも是非手に取っていただき、その魅力を感じていただければと思います。