AM5赤道儀レビュー 周辺パーツ編

AM5赤道儀をより快適に

コンパクトながら搭載力に優れたZWO社のAM5赤道儀が、天体写真ファンの注目を集めています。今回は、そのAM5を更に使いやすくするパーツをご紹介します。


AM5用のハーフピラー

AM5赤道儀は小型なので、鏡筒を天頂付近に向けると、鏡筒の接眼部が三脚に干渉してしまうことがあります。特に筒の長い屈折望遠鏡の場合は注意が必要で、モーター高速回転時に鏡筒と三脚がぶつかると、駆動モーターを痛めてしまうことにもなりかねません。

そこでお勧めしたいのが、ハーフピラーです。赤道儀本体と三脚の間にハーフピラーを追加すると、不動点が上がり、接触の危険性が減るため、安心して使えるようになります。 現在、AM5赤道儀用のハーフピラーとしては、ZWO社から「PE160」と「PE200」の2種類、迷人会工房からも「鋼の柱君 HH-01」が発売されています。

上は、私が使用している「鋼の柱君 HH-01」の写真です。HH-01は、ZWO社のハーフピラーに比べると若干重量がありますが、3本の直径20㎜ステンレス製支柱に加え、ねじれ剛性を高める中央柱が装備されており、赤道儀と三脚をがっしりと固定することができます。 実際、10キロ以上の機材を載せて撮影していますが、強度不足は全く感じられません。AM5赤道儀用として、お勧めできるハーフピラーと思います。
※レビュー使用機材の「鋼の柱君 HH-01」はプロトタイプのため 、製品版と一部仕様(カラー)が異なります。

AM5用 極軸望遠鏡やPole Master取付アダプタDP31-AM5

AM5赤道儀には、極軸望遠鏡が装備されていません。メーカーは、ASIAIRで使用することを前提に設計しており、極軸合わせはASIAIRのPA機能(Polar Alignment機能)で合わせることを推奨しています。

PA機能は便利ですが、ASIAIRを持っていないユーザーには極軸を合わせる手段がありません。その問題を解消するため、Pole Masterや極軸望遠鏡を取り付けるアダプターDP31-AM5が、K-Astecから発売されました。
DP31-AM5は、アリガタ形状をしており、AM5赤道儀の側面に設けられたアリガタ金具に固定することができます。また、付属のネジを使って、AM5赤道儀本体に直接固定することも可能です。

DP31-AM5の北側にはカメラネジが固定されており、ポールマスターアダプターUNC4分の1をねじ込んで、PoleMasterを取り付けることができます。また、南側にあるネジ穴を利用して、光学式の極軸望遠鏡XY70-55PFを取り付けることもできます。
以下、実際にAM5赤道儀DP31-AM5を取り付け、PoleMasterや極軸望遠鏡を使って極軸を合わせた後、天体撮影を行ってみました。

極軸望遠鏡 XY70-55PFの使い心地

XY70-55PFを覗くと、北極星を導入するためのスケールが見えます。KYOEI オリジナル極軸望遠鏡(AP赤道儀用/SX赤道儀用)でもおなじみのiOptron社のスケールで、暗視野照明も搭載されており、都会の星空でも北極星がよく見えます。

北極星の導入位置は、スマホのアプリで確認できます。極軸望遠鏡スケールの水平垂直を合わせた後、アプリが指し示す位置に北極星を導入すれば、極軸合わせが完了です。非常に簡単で、以前から極軸望遠鏡を使っていた方にとっては、待望のアイテムだと思います。

極軸合わせの後、焦点距離500mmの望遠鏡を使ってオートガイド撮影し、追尾状況を確認していると、極軸が僅かにずれているように感じました。そこで、Pole Masterで表示された導入位置との差を調べてみたところ、約15′ずれていました。
XY70-55PF は、赤道儀の側面に取り付けるタイプの極軸望遠鏡なので、回転軸と若干ずれてしまうのが原因でしょう。しかし、ズレ量はそれほど大きくないため、電視観望、観望用途では十分な設置精度だと思います。タブレットやパソコンを開くことなく、素早く極軸を合わせたいときに重宝するアイテムでしょう。

Pole Masterでの極軸合わせ

DP31-AM5に別売りのポールマスターアダプターUNC4分の1を取り付け、そこにPole Masterを取り付けました。赤道儀の中心と少し離れていますが、北極星は無限遠の彼方にあるので導入精度には問題ありません。
パソコンにインストールしたPole Masterのソフトウェアを起動し、画面指示に従って、AM5赤道儀を回転させながら、極軸を合わせました。

その後、極軸望遠鏡の時と同じように、焦点距離500mmの望遠鏡でオートガイド撮影を実施したところ、極軸ズレは確認できませんでした。
Pole Masterを使用するにはパソコンが必要になりますが、ASIAIRを使わずに、正確に極軸合わせられる点がメリットでしょう。

バランスウェイトシャフト

AM5赤道儀には、バランスウェイト無しで13キロまでの機材を搭載することができますが、大きな機材を載せると、天頂付近に望遠鏡を向けたときにバランスを崩し、機材を転倒させる危険があります。
ビクセンFL55SSRedCat51等の小型軽量の機材の場合は問題ありませんが、大きな望遠鏡の場合はバランスウェイトを搭載する方が安全です。

ZWO社から、AM5用ウェイトシャフトが発売されています。軸径が20ミリなので、ビクセンのSX赤道儀用バランスウェイトを使うことができます。

※上は、AM5用ウェイトシャフトが手元になかったため、代用としてKYOEI AZ-GTi用20φウェイトシャフトを取り付けてテストした様子です。KYOEIオリジナルのAZ-GTi用20φウェイトシャフトも同じM12規格のため、AM5赤道儀にねじ込むことができます。しかし、本来AM5には適しておらず赤道儀へのねじ込み部分が長いので、ねじ込み過ぎると赤道儀の内部回路に接触し、破損や故障につながる恐れがあります。 上の例ではねじ込み部分にM12の蝶ナットを追加して、深くねじ込み過ぎないよう注意して使用することができましたが、決して真似はなさらないでください。純正品の使用を推奨します。

まとめ

今回は、AM5赤道儀用のハーフピラー、極軸合わせ支援ツール、それにバランスウェイトシャフトをご紹介しました。中でもハーフピラーは、是非活用したいアイテムだと思います。
ASIAIRのPA機能は便利ですが、北極星の西側の星が見えない場合は使えないなど、少々使いにくい点もあるので、極軸望遠鏡やPole Masterの取り付けアダプターDP31-AM5もおすすめです。用途に合わせて、極軸望遠鏡やPole Masterの取り付けを検討してみてはいかがでしょうか。
バランスウェイトについては、ビクセンやタカハシの赤道儀と異なり、AM5赤道儀にはクランプフリーがないため、正確にバランスを取ることはできませんが、転倒防止のために、取り付けることをお勧めします。
これらのパーツでAM5赤道儀の操作をより快適にし、天体撮影や観望を楽しんでみてはいかがでしょうか。

レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

ページトップへ