Lacerta MGEN-3のインプレッション

Lacerta MGEN-3のインプレッション

Lacerta MGEN-3 オートガイダーは、一世を風靡したM-GEN オートガイダーの後継機種 です。MGEN-3 は、前機種のスタンドアローン型の機能を継承しつつ、より進化し、使い やすくなりました。今回は、MGEN-3 の概要や前機種との違いをご紹介しながら、オート ガイダー撮影時の使用感をまとめました。

MGEN-3 オートガイダーの外観と概要

MGEN-3 オートガイダーは、ハンドコントローラーとガイドカメラで構成されています。 ハンドコントローラーとガイドカメラの他、各種ケーブル、望遠鏡と接続するためのアダプ ター類、そして詳しい日本語マニュアルが付属しています。

ハンドコントローラーの底部には、上写真のように、各種ケーブルを接続するコネクタが設 けられています。一番左は、デジタルカメラ接続用のジャックです。その右側にAUX端子 とSDカードスロット、中央にガイドカメラUSB用コネクタ、その右にオートガイドケー ブルを接続するコネクタと電源供給用USBコネクタが写っています。 ガイド状況を監視する撮像素子(CMOS センサー)は、直方体をしたガイドカメラ内に固 定されています。撮像素子には、ピクセルサイズが3.75×3.75(μm)のモノクロCMOS セ ンサー(CMOS AR0130CS)が用いられています。ガイドカメラ用として標準的なセンサー ですが、感度は十分で、実際の撮影でもガイド星探しに困ることはありませんでした。

ガイドカメラの内側には、1.25インチのフィルターネジ(M28x0.6)が切られています。カ メラには1.25 インチのノーズリープやT2 マウント用アダプターが付属しており、これら を使えば望遠鏡の接眼部に取り付けることも可能です。

前機種M-GEN との比較

MGEN-3を前機種のM-GENと比較したときにまず目に留まるのは、ハンドコントローラ ーの画面が大きく見やすくなったことです。画面の解像度も高く、カラー化されたので、前 機種に比べて文字やアイコンが大変見やすく、操作感が大幅に向上しました。

画面の向上に加えて、便利な機能も追加されています。中でも特筆すべきは、ワンプッシュ オートガイダー機能が搭載されたことでしょう。その名の通り、コントローラー上の「Start Guiding」ボタンを1度押すだけで、ガイド星の探索からキャリブレーション、そしてオー トガイドまで自動で行ってくれます。M-GENでは、ガイド星探し→ガイド星選択→キャリ ブレーション→ガイド開始と、それぞれ作業が必要でしたが、それらが文字通り、ワンプッ シュで可能になりました。非常に便利で、一度使うと手離せない機能です。

ガイド動作自体も、複数の星をガイド星に選ぶ、マルチスターガイドに対応し、精度を向上 させるアルゴリズムが追加されました。 その他、前機種ではDC12V ジャックだった電源端子がDC5V のモバイルバッテリーに対 応するなど、使い勝手も大幅に向上しており、MGEN3は、M-GENの大進化版と言えそう です。

MGEN-3 のガイド鏡のセットアップ

MGEN-3を実際に使用する前に、MGEN-3のカメラをガイド鏡に取り付け、ピントを合わ せておきましょう。遠征する場合も、自宅でガイド鏡のピントをしっかりと合わせておけば、 現地ですぐに撮影に移ることができ、ストレスがありません。 オートガイド用のガイド鏡には、昔は小型の天体望遠鏡が使われていましたが、最近は焦点 距離の短いレンズがコンパクトかつ軽量でよく使われます。 MGEN-

MGEN-3 のガイド鏡によく使用されているのは、小型ビジョンカメラ用のレンズです。コ ーワの75mmと100mmレンズがオートガイド用として実績があり、MGEN-3とこれらの レンズがセットとなった商品も販売されています。MGEN-3 カメラとレンズに合わせた固 定パーツもセットになっているので、これからガイド鏡を探すならこのセットがお勧めで す。 ガイド鏡の準備が整ったら、MGEN-3 を接続してピントを合わせておきましょう。ピント 合わせは、MGEN-3 のライブビュー画面で行うと合わせやすいです。取扱説明書を見なが ら、ライブビュー画面を開き、星が小さくなるようにピントリングを動かします。

星でピントを合わせにくい環境なら、遠くの夜景でピントを合わせることもできます。ピン トが合ったら、ピントリングをテープなどで固定し、誤ってピントをずらしてしまわないよ うにしましょう。

MGEN-3 とデジタルカメラの接続

MGEN-3 とカメラをケーブルで繋ぐと、カメラのシャッターをMGEN-3 からコントロー ルできるようになります。

MGEN-3 用のシャッターケーブルとしては、K-Astec 製のM-GEN 用シャッターケーブル2(2.5mmジャック用)が便利です。このケーブルには、2.5mmジャックケーブルの他に、拡張ポートが設けられているので、この端子に市販のシャッターケーブル(ビクセンシャッ ターケーブル各社用、ビクセンシャッターケーブルSony用)を繋ぐと、他社製カメラを制 御することも可能です。また、2台同時にシャッターを切ることもできます。

MGEN-3 にはディザリング撮影機能が内蔵されていますが、この機能を使用するには、カ メラのシャッター制御が必要です。是非シャッターケーブルも準備して、ディザリング撮影 に挑戦してみましょう。

Tips: ディザリングとは:1枚撮影が終わる度にオートガイドが一旦停止し、数ピクセル構 図を移動させた上で、再びオートガイドを開始し、シャッターを切る撮影アルゴリズム。画 像処理時のノイズを平均化する効果がある。

MGEN-3 とAP 赤道儀でオートガイド撮影

MGEN-3オートガイダーを郊外に持ち出し、実際にオートガイド撮影に使用してみました。 今回使用した機材は、小型で高性能な天体望遠鏡ビクセンFL55SS とビクセンAP 赤道儀 です。MGEN-3は、コーワ100ミリレンズや固定金具等がセットになった、MGEN-100HSA を使用しました。

撮影テストでは、まずワンプッシュオートガイドの動作を確認しました。マニュアルに記載 された通り、ボタンを押すだけで、ガイド星の選択からキャリブレーション後のガイド開始 まで、スムーズに行うことができました。
撮影では、デジカメの感度をISO1600、露出時間を480 秒に設定して撮影しました。ガイ ド中、MGEN-3 と赤道儀のコントローラーをチェックしていましたが、ガイド補正信号は 赤道儀に的確に伝達され、撮影した星に流れはありませんでした。

上は、MGEN-3を使って撮影した、いて座のM8とM20星雲です。480秒露光の画像を6 枚重ね合わせた後、コントラストを強調した画像ですが、夏の天の川の中の星雲が色鮮やか に写し出されています。
M8 とM20 を撮影後、ワンプッシュオートガイドを終了し、今度は、ガイド星選択からキ ャリブレーション、ガイド開始までマニュアルで設定して撮影を行いました。

マルチスターガイドになったため、選択されるガイド星の数が一気に増えたことに驚きま したが、追尾精度は良好で、こちらも撮影した星に流れは発生しませんでした。

ポータブル赤道儀とMGEN-3

MGEN-3 はパソコンやタブレット端末が不要のスタンドアローン型なので、ポータブル赤 道儀とも相性の良いオートガイダーです。実際に、ユニテック社のSWAT-350 に載せて、 1軸ガイド撮影を試してみました。

まず、SWAT用のハンドコントローラーのガイド端子に、ガイドケーブルを接続します。次 に、MGEN-3を起動してメニュー画面を開き、赤緯軸をオフにしましょう
。 その後は、通常操作と同じように、ガイド星選択からキャリブレーション、ガイド開始でオ ートガイド撮影を楽しむことができます。

追尾精度が高いSWAT-350 でも、長時間ノータッチで連続撮影すると星が少し流れて写る コマが発生しますが、MGEN-3 で1 軸オートガイドすると撮影画像は全て点像で写りまし た。一般的なポータブル赤道儀なら、よりMGEN-3の効果が感じられると思います。

MGEN-3 の印象

MGEN-3 オートガイダーを使用した印象や上記で触れなかった内容を、以下に箇条書きで 列挙します。
前機種と比べて画面が非常に見やすくなり、アイコン化のおかげで操作もしやすくなった。 また、モバイルバッテリーに対応したので、DC12V電源を用意する必要がなくなった点は 嬉しい。
ワンプッシュオートガイドは大変便利で信頼性も高い。久しぶりの撮影でオートガイドの 操作方法を忘れていたが、この機能のおかげでマニュアルを見ずに撮影を開始することが できた。一度使うと手離せない便利な機能だ。
マルチスターガイドになって更に精度が向上し、オートガイドの安定感も増したように感 じられる。ただ、場合によってはガイド星が多すぎると感じる場合もある。ガイド星を個別 にキャンセルすることは可能だが、ガイド星の最大数を設定できればさらに便利だと感じ た。
コーワのガイド鏡には、K-Astecのフードヒーターを取り付けた。専用設計だけに一体感が あり、カメラ部分とフードの前後2点留めができるため、安心感が増した。結露防止性能も 十分で、レンズの結露を気にせずに撮影を続けることができた。
ビクセンAP-WM赤道儀MGEN-3のマッチングは良好で、大容量のモバイルバッテリー 1 個で両方を動作させてオートガイド撮影することができた。ビクセンFL55SS も小口径 ながら星像はシャープで、手軽ながら天体撮影を本格的に楽しめる組み合わせだと感じた。 MGEN-3SWAT-350 の組合わせで撮影してみて、ポータブル赤道儀と組み合わせての1 軸ガイドもアリだと感じた。オートガイド端子が装備されているビクセン星空雲台ポラリ エUなどと組み合わせれば、星雲星団の撮影も楽しめそうだ。

まとめ

今回のテスト撮影を通じて、Lacerta MGEN-3 オートガイダーは、前機種のスタンドアロ ーン機能を継承しながら、更に使い勝手や精度が向上したオートガイダーであることが確 認できました。 感心したのは、ワンプッシュオートガイド機能の便利さです。数か月振りに撮影するときな ど、オートガイダーの操作方法を忘れてしまった場合でも、ワンプッシュでガイド開始まで 行ってくれるので、本当に助かります。貴重な撮影時間を無駄にすることもありません。 M-GENが一世を風靡していた数年前と比べると、ワイヤレスで動く機器なども登場し、オ ートガイド撮影の環境も様変わりしました。それでもMGEN-3は、スタンドアローンと低 電力という他にはない魅力を持つオートガイダーです。ワンプッシュオートガイド機能は とても快適です。是非、MGEN-3での天体撮影をお楽しみください。

レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

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