夏の観測ガイド

夏の観測ガイド



夏の夜空には、はくちょう座あれい星雲・こと座リング星雲といった輝度の高い惑星状星雲、ヘルクレス座M13のように大きな球状星団、いて座に明るく広がる三裂星雲/干潟星雲など、眼視・撮影ともに挑戦しやすい星雲星団が多数存在します。

星雲や星団なんて難しくてわからない、という場合は「夏の大三角」(=はくちょう座デネブ・こと座ベガ・わし座アルタイル)を見つけることから始めてみましょう。主要な恒星が複数把握できれば、それらの位置関係との対比で星座アプリや自動導入望遠鏡を頼りに星雲や星団にたどり着くことができます。

日本から観測する場合に高度が低くて夏の短い間しか観測できない星座として、さそり座があります。さそり座アンタレスの高度は東京や大阪では南中時すら30度に届きません。南中時刻は6月で24時ごろ、7月で22時頃、8月で20時ごろです。

8月の20時と言えば地域によっては薄明がまだ終わっていない時間ですので空がすっかり暗くなってからだと子午線の西側に傾きつつある姿を観測することになり、あっという間に沈むなぁとお感じになるかもしれません。

梅雨が明けたら南に光害が少なく空の開けた場所へ遠征し、ひと時の夏の風物詩をお愉しみ頂ければと思います。


ステラナビゲーターVer.11で作成


そのほかの夏の風物詩と言えばペルセウス座流星群が挙げられます。

周期133年のスイフト・タットル彗星を母天体とし毎年8月12日~13日ごろ極大を迎えます。
前回1992年の彗星回帰から少し年数が経ってしまい近年では流星出現数が減少傾向にある群ではありますが、時期がお盆のお休み期間に該当すること、例年好天に恵まれる場合が多いこと、夏の天の川を併せて観測または撮影できることなどから人気があります。

望遠鏡がなくてもカメラ(と赤道儀)を用意すれば意外と簡単に ”夏の天の川と流星群” という強いテーマ性を持つ星景写真に挑戦できてしまいますので、未経験者の方の天体写真デビューのきっかけとしても好適です。








惑星を撮ってみよう 初めての望遠鏡購入ガイド

満天の星空の下、天体観測をお楽しみください!!




春から初夏の観測ガイド

春から初夏の観測ガイド

春から初夏へと季節が進むこの時期には、天の川やその周辺に位置する星雲星団など、たくさんのメジャー天体を観測することができます。 南の空から東の空へと横たわる天の川を撮影したいなら、4月は深夜2時ごろ、5月は深夜0時ごろ、6月は22時ごろ、7月なら20時ごろからがチャンスです。
この時期は日に日に気流が安定して空のコンディションが向上していきます。気候的も過ごしやすい季節なため、入門者の方が天体観測デビューするのにとても適しています。 もちろん中級者以上の方にも好条件チャンスであることに違いはありません。 この時期ならではの、おおぐま座やおとめ座の系外銀河など、難易度の高い対象にもぜひチャレンジしてみてください! 梅雨の合間の晴れ間には素晴らしいシーイングが現れたりします。チャンスを逃さないように!!

ステラナビゲーターVer.11で作成


春夏は南の地平線から東の空へと横たわる天の川が刻一刻と立ち昇ってくる迫力ある姿が見られる季節です。ステラナビゲータなどのシミュレーションソフトがあれば、撮影計画を練って星景写真に挑戦することができます。
吉田隆行氏 「大台ケ原の天の川」  

天体写真家の吉田隆行氏は、標高1600メートルの大台ケ原を往復3時間歩いてこの作品を撮影しました。低空にかかった淡い雲海で下界と隔離された原野の風景が天の川の光によって映し出され、雄大な天の川銀河の姿と相まって荘厳な印象を与えています。
星景写真の撮影のためにトレッキングする場合、カメラや三脚といっしょに担いで歩けるポータブル赤道儀を使用します。撮影チャンスを確実なものにするためには、小さくても高精度で信頼性の高いポータブル赤道儀をご選択ください。


SWATシリーズの最高峰!「ユニテック SWAT-350」




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過ごしやすい気候が続きます。天体観測をお楽しみください!!




AM5/AM3の比較

AM5/AM3の比較 AM5/AM3の比較

ZWO社から2022年春に発売されたAM5赤道儀(以下「AM5」)と、約1年後に発売されたAM3赤道儀(以下「AM3」)は、ともに力強いモーターを採用した波動型赤道儀として「小型なのに大きな望遠鏡を載せられる」「ASIAIRを使えて便利」と天体撮影ファンの注目を集めていますが、「AM5とAM3のどちらを買えばいいのか?」という声もよく聞きます。そこで、2つの赤道儀を比較し、それぞれの仕様の違いをご紹介したいと思います。

使用機材

仕様上の違い

まず、AM5とAM3のスペックを比べてみましょう。以下に、一覧表でスペックをまとめてみました。スペックが異なる箇所に、黄色マーカーを引いています。


AM5 AM3
架台形式  赤道儀
架台モード  赤道儀モード/経緯台モード
駆動系  ストレイン・ウェーブ・ギア(波動歯車装置)+シンクロナスベルト(減速比・300:1)
ピリオディックモーション  <±20″(周期:432秒)  <±20″(周期:288秒)
赤経駆動  NEMA42ステッピングモーター
Model No.17(減速比・100:1)+ブレーキ
 NEMA35ステッピングモーター
Model No.14(減速比・100:1)+ブレーキ
赤緯駆動  NEMA35ステッピングモーター
Model No.17(減速比・100:1)
 NEMA35ステッピングモーター
Model No.14
搭載重量  13kg(カウンターウェイト未使用時)
 20kg(カウンターウェイト使用時)
 8kg(カウンターウェイト未使用時)
 13kg(カウンターウェイト使用時)
本体重量  5kg  4kg
緯度調整範囲  0°-90°  0°-90°
方位角調整範囲  ±10°  ±10°
アリミゾ規格  ロスマンディ/ビクセン互換(デュアル式)
BWシャフト取付規格  M12
モーター解像度  0.17秒
最大駆動スピード  秒間6°(対恒星時1440倍速)
駆動速度  対恒星時:0.5×/1×/2×/4×/8×/20×/60×/720×/1440×
外部電源ポート  DCプラグ(外径:5.5φ-内径2.1φ)/入力:12V-3A
消費電力  12V-0.386A(スタンバイ時)/12V-0.58A(恒星時駆動時)/12V-1.5A(自動導入時)  12V-0.386A(スタンバイ時)/12V-0.58A(恒星時駆動時)/12V-1.7A(自動導入時)
オートガイド端子  ST4互換(SSAG)
外部インターフェース  USB/Wi-Fi
ゼロポジション  機械式
適応温度(使用時)  -20゚C~50゚C  -15゚C~40゚C
瞬電保護  有り

ざっと見たところ、使用されている赤緯モーターは異なりますが、それ以外は、重さや大きさが違う程度のようです。以下、スペックが異なる点について、実際に使用した感想を交えながら、見ていきましょう。


赤道儀の大きさ

AM5かAM3を購入しようと思った際に、一番迷うのは大きさの違いでしょう。AM5とAM3のデザインは全く同じで、外観上のデザインの違いはほとんどありません。しかし、大きさはスペック表から想像した以上に異なっており、AM5に比べてAM3は一回り小さくなっています。

上は、AM5とAM3を並べた写真です。写真からも、AM5に比べてAM3が一回り小さいことがよくわかると思います。 ※AM5には自作のPoleMaster取り付けステーを固定しています。

次の画像は、望遠鏡を取り付けるアリミゾ金具方向から写した写真です。AM5のアリミゾ金具とAM3のアリミゾ金具を比べると、幅は同じですが、AM3のアリミゾ金具は長さが短く、コンパクトになっています。


赤道儀の重さ

他社製赤道儀と比較すると、AM5も決して重い架台ではありませんが、AM3の方が更に軽く感じます。



実測してみると、AM5が5.9キロのところAM3は4.15キロと、AM3は2キロほど軽くなっています。男性ならAM3は片手でも軽々持ち上げられるでしょう(但し、赤道儀に取っ手は付いていないので、落とさないように注意が必要)。


搭載可能重量の違い

バランスウェイト無しの場合、AM5は13キロ、AM3は8キロまでの機材を載せることができます。バランスウェイトを付ければ、AM5は20キロ、AM3は13キロまで搭載可能重量を増やすことができます。
何キロと言われてもイメージしにくいと思いますが、実際に使用した印象では、AM5ならビクセンR200SSのような口径20センチの反射望遠鏡でも搭載できる一方、AM3では厳しく、反射なら15センチ程度が限界でしょう。



屈折望遠鏡の場合は、AM5なら13~15センチクラスも搭載できますが、AM3は10センチクラスまでが無難だと思います。AM5なら10センチクラスを複数搭載することもできるでしょう。
ZWOの公式ページでは、赤道儀の性能アピールのためか、搭載重量の限界に近い大きな天体望遠鏡を載せていますが、鏡筒が大きくなると、重さだけでなくモーメントも大きくなりますので、実用では上記の大きさまでの機材が安心だと思います。


ASIAIRとの連携について

AM赤道儀シリーズの購入を検討されている方は、まず間違いなく、ASIAIRでの使用を考えていらっしゃると思います。
AM5とASIAIRの接続方法には、USBケーブルを使って有線で繋ぐ方法と、Wifiで接続する方法があります。AM3の場合には、これらに加えてBluetoothでの接続方法も追加されました。
Bluetoothでの接続は、コントローラーが不要になる点が便利です。接続方法が違うだけで、ASIAIRの操作や機能自体は全く同じですが、Bluetooth接続を使いたい場合は、AM3赤道儀を選ぶとよいでしょう。


追尾精度について

AM5とAM3を天体撮影に使用してみました。追尾精度に関しては、どちらの赤道儀も必要十分で、オートガイドのレスポンスも良好でした。追尾精度に関しては、どちらの赤道儀を選んでも、まず問題ない範囲に収まっていると思います。



上は、AM5にε-160EDを載せて撮影したM35散開星団の撮影画像です。追尾状況がわかるようにトリミングしていますが、星が点像に写っているのがわかります。


次は、AM3にFC-100DFを載せて撮影したM81の撮影画像です。こちらも同じようにトリミングしています。こちらの画像も星が点像に写っています。
使用した鏡筒は異なりますが、どちらの赤道儀も天体撮影に使用するのに必要十分な追尾精度やオートガイド適性を備えていると思います。その点は安心して大丈夫でしょう。


経緯台としても楽しめる

以上、天体撮影時の性能について紹介しましたが、AM5、AM3には、経緯台モードも搭載されています。経緯台として使用すれば、ハイパワーで高速回転も可能なモーターを使った天体観望も可能です。


上は、AM3に口径8センチの天体望遠鏡を載せ、経緯台モードで天体観望している様子です。ASIカメラとASIAIRを使えば、プレートソルビング機能も使用でき、これまで以上に正確に天体を視野内に導入することができます。



また、K-Astec社からは、コーワ ハイランダープロミナーをAM赤道儀に取り付けるアダプターが販売されています。このアダプターを使用すれば、上写真のようにAM赤道儀にハイランダーをしっかりと固定することができ、双眼での天体観望も楽しむことができます。観望用の架台としても魅力的な赤道儀と言えるでしょう。


まとめ

AM5とAM3のスペックを比較しましたが、モーターの精度や追尾精度に関してはほぼ同じ性能と言え、ユーザーが所有している機材の大きさに合わせて選ぶのが一番だと改めて感じました。
具体的には、口径20センチクラスの反射望遠鏡や口径13センチクラスの屈折望遠鏡に使うなら、AM5を選ぶ方が安心だと思います。一方、10センチクラスの屈折望遠鏡や13センチクラスの反射望遠鏡であれば、AM3が適しているでしょう。
また、荷物の制限が厳しい海外遠征には、AM3が最適だと思います。私も何度か海外に撮影に出かけていますが、AM3の大きさと重さは大変魅力的です。正直、AM5とAM3の2台ともあれば、操作感も同じで、メインとサブ機で撮影や観望を快適に楽しめるだろうと思うほどです。是非皆様もAM5やAM3で快適な撮影・観望を楽しんではいかがでしょうか。


レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。

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AM5赤道儀レビュー 周辺パーツ
AM5 周辺パーツ



ZWO 社 ASI 冷却CMOS カメラの乾燥剤の再生方法

ZWO 社 ASI 冷却CMOS カメラの乾燥剤の再生方法

ZWO/ASI冷却CMOSカメラ
乾燥剤の再生方法

ZWO 社の冷却CMOS カメラのチャンバー内には、結露を防ぐための乾燥剤が入っていま す。カメラを使用するにつれて除湿性能は徐々に低下していくので、センサーが結露するよ うになったら、乾燥剤の再生を行いましょう。今回は、私のASI2600MCProを例に、乾燥剤の再生手順をご紹介します。


冷却CMOS カメラに乾燥剤が必要な理由

冷たい物体の表面に水蒸気を含んだ空気が触れると、空気の温度は下がります。温度が下がると飽和水蒸気量は減少しますが、湿度が100%以上になると、空気中の水分が凝結して物体の表面上で水滴となります。これが結露現象です。冷たいコップの表面に水滴が付く様子を想像するとわかりやすいと思います。

ZWO 社 ASI 冷却CMOS カメラの乾燥剤の再生方法

冷却CMOSカメラの場合、カメラのセンサーやカバーガラスが冷たいコップに相当します。ZWO 社のカメラのカバーガラスには結露防止ヒーターが取り付けられていますが、2 年ほどで乾燥剤の能力が落ちて、結露が発生してしまうようです。私のASI2600MCProの場合は、購入後、約3年で結露が発生しました。 ZWO 社に限らず、他社の冷却CMOS カメラでも、結露防止には乾燥剤がよく用いられています。一部、アルゴンガスをチャンバー内に充填したカメラもありますが、どちらも永久的なものではなく、乾燥剤の再生やガスの再充填が必要です。特に日本は湿度が高いので、結露には注意する必要があります。


晴れた日に屋内で作業しましょう

乾燥剤を交換するには、カメラのチャンバーを開けなければなりません。雨の日や湿度の高い日にチャンバーを開けると、湿度の高い空気が入り込んでしまうので、湿度の低い、天気の良い日を選んで作業しましょう。
また、ほこりやゴミの混入を防ぐため、風のない室内で行いましょう。クリーニングルームが理想ですが、一般家庭にはそのような場所はありません。私は、我が家で最もホコリが少ないと思われる部屋で作業しました。


再生作業に必要なもの

冷却CMOSカメラのチャンバーを開けた際にごみを吹き飛ばすために、カメラの掃除用のエアブローを用意しましょう。また、結露でカバーガラスが汚れている場合のために、無水エタノールとクリーニングペーパーや綿棒なども準備しておくと安心です。

ZWO 社 ASI 冷却CMOS カメラの乾燥剤の再生方法


カメラのチャンバーを開く

いよいよ乾燥剤を取り出す作業の開始です。まず、3つのネジ(引きネジ)を緩めて、 ASI2600MCProの前面に取り付けられているチルトプレート(黒色プレート)を外します。 なお、プレートを外す前に、再取り付けの際にプレートの向きがわかるように、カメラとプレートに印を付けておくと安心です。

ZWO 社 ASI 冷却CMOS カメラの乾燥剤の再生方法

次に、カメラのフロントピースの6つのネジを緩めましょう。フロントピースは、Oリング で密閉されているので、1つのネジを一気に緩めるのではなく、6本のネジを少しずつ均等 に緩めて外すようにしてください。ネジが外れたら、フロントピースをカメラ本体から慎重 に取り外してください。

ZWO 社 ASI 冷却CMOS カメラの乾燥剤の再生方法


乾燥剤を再生させる

フロントピースを外すと、フロントピースのカバーガラスの周りに白い丸いタブレットが 4つ見えると思います。これがチャンバー内の湿度を下げる乾燥剤です。フロントピースか ら4つとも取り外しましょう。

ZWO 社 ASI 冷却CMOS カメラの乾燥剤の再生方法

乾燥剤を電子レンジに入れ、500Wで約2分間加熱します。加熱すると乾燥剤に蓄えられて いた水分が蒸発し、乾燥剤が再生します。電子レンジから乾燥剤を取り出し、乾燥剤がまだ 温かいうちにカメラのチャンバー内に戻します。

ZWO 社 ASI 冷却CMOS カメラの乾燥剤の再生方法

なお、カメラのセンサーやカバーガラスにホコリや汚れが付着している場合は、乾燥剤を再 生する前に清掃しましょう。清掃方法については、最後の項目でご紹介しています。


チャンバーを再封する

乾燥剤をチャンバー内の所定の位置に戻し、素早くチャンバーを再封します。これは、乾燥 剤が長時間外気に触れて、外気の湿度を吸ってしまうのを防ぐためです。

ZWO 社 ASI 冷却CMOS カメラの乾燥剤の再生方法

フロントピースを被せて、6つのネジを締めて再封します。この時、カメラの固定用ネジ穴の内側にO リングがしっかりと入っていることを確認しましょう。また、ヒーターの接点 が接触するように、フロントピースの向きを確認して被せましょう。外すときと同じように、 1つのネジを一気に締めるのではなく、対角の位置のネジを順に少しずつ締めて均等に締め てください。


新しい乾燥剤に交換

乾燥剤の再生を繰り返していると、乾燥剤自体が劣化し、粉末状になってしまいます。劣化すると乾燥剤としての能力も落ち、カメラのセンサーに粉末が付いてしまいますので、新しい乾燥剤タブレットと交換しましょう。

ZWO 社 ASI 冷却CMOS カメラの乾燥剤の再生方法

交換の手順は、再生の手順と同じようにチャンバーを開けて、古い乾燥剤と新しいものを交換します。この時、乾燥剤の大きさが、カメラにあらかじめ取り付けられているものと同じであることを確認しましょう。サイズが異なる乾燥剤を無理にねじ込むと、乾燥剤が割れて、センサーにゴミが付着してしまいます。


センサーの清掃

センサーや保護ガラスのゴミが気になるときは、乾燥剤の再生や交換の際に清掃しましょう。

ZWO 社 ASI 冷却CMOS カメラの乾燥剤の再生方法

まず、エアブローを使用してゴミを吹き飛ばします。エアブローなら、センサーや保護ガラスに傷や拭きムラをつける心配がありません。ほこりが付いた程度なら、ブローだけで綺麗になると思います。

結露の跡が残っていたり、エアブローだけでは取り切れないゴミが付いている場合は、綿棒やクリーニングペーパーにエタノールをしみこませて、そっと拭き取ります。ガラスや表面を傷つけないよう、できるだけやさしく拭きましょう。

ZWO 社 ASI 冷却CMOS カメラの乾燥剤の再生方法

もし、オイルリークが確認できる場合や、あまりにもしつこい汚れが付着して取れない時は、無理にこすらず、販売店に相談した方が安心です。


レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。

AX VISIO 10x32 JPN 試用レポート

AX VISIO 10x32 JPN 試用レポート AX VISIO 10x32 JPN
試用レポート

2024年スワロフスキー・オプティック社より発表の世界初のスマート望遠鏡 AX VISIO 10×32JPNの発売に先行して、ハクバ写真(㈱)様よりデモ機をお借りし、大阪城公園にて試用しました。多機能なAX VISIO 10×32 JPNの紹介と試用レビュー、大阪城公園でのバードウォッチングの様子をお伝えします。

AX VISIO 10×32 JPNの概要

AX VISIO10×32JPNは倍率10倍、口径32mmの双眼鏡にカメラ内蔵した世界初のスマート双眼鏡です。スマートフォンやタブレット端末をWifiおよびBluetoothを用いてAX VISIO10×32JPNを接続することにより、内蔵のカメラで撮影することはもちろんのこと、アプリを連携させることにより視野内にいる野鳥の名前をレンズに表示させることも可能です。見る・撮る・調べる・共有することをAX VISIO10×32JPN1台で完結させます。


AX VISIO 10×32 JPNインプレッション

外装はNL PUREと同様のラバー素材が使用されており、手になじむ質感です。センターにメニュー選択用のノブがあり、各モードはこのリングを回すことにより選択します。決定ボタン「●」や選択ボタン「V」、電源ボタン類は右手側、センターには双眼鏡のピント調整が位置しています。カメラのピント調整は決定ボタンを半押しすることにより、オートフォーカスします。双眼鏡本体の見え味はスワロフスキーEL シリーズに近く、色収差も感じることがありませんでした。持参したEL 10×42 明るさや視界の広さを比較しても遜色なく、スワロフスキーらしい明るくすっきりとした見え味を楽しむことができます。カメラおよびバッテリー内蔵のため本体の厚みはもちろんのこと、重量も約1000g のため女性が長時間使用するには少し厳しいと感じました。残念ながら現時点では三脚の取り付けができないため、今後に期待したいと思います。今回はWifi 経由で写真を常にダウンロードしながら使用しましたが、5 時間程度持ちました。Bluetooth 接続のみの場合は1 日程度持つようです。バッテリーは別途追加購入できますので予備として持ち運びしておけば安心です。


フィールドでの試用

今回は大阪城公園にて試用を行いました。事前に「SWAROVSKI OPTIK Outdoor アプリ」アプリをインストールして、wifi・Bluetooth 経由でAX VISIO10×32JPN とスマートフォンと接続をします。


AX VISIO 10×32 JPNは同時に5つの端末を接続することが可能ですが、現時点では写真・ビデオは1端末のみがダウンロードできる仕様となっています。


搭載のメニューは ・鳥マーク:野鳥識別
・カメラマーク:写真撮影・ビデオ撮影・Live view
・リスマーク:動物名識別
・ターゲットマーク:指定した場所への誘導
・方位磁針マーク:方位・高度の表示
・スマホマーク:他アプリのインポート
・星Iマーク:他アプリ連携
・星IIマーク:他アプリ連携

スワロフスキーより提供のアプリ以外もインポートが可能のため、今後の拡張性が期待できる余白を残した製品となっています。

今回はこの中より、
① 撮影(写真・ビデオ)
② 野鳥名識別
③ 視野の共有 をご紹介します。

① 撮影(写真・ビデオ)・Live View
操作はとても簡単です。メニューをカメラマークに合わせて右側レンズ視野内の赤枠内に被写体を入れ、決定ボタンを半押しでオートフォーカスし、全押しでシャッターを切ります。撮影した画像は「SWAROVSKI OPTIK Outdoor アプリ」に自動転送され、撮影した画像のサムネイルがスマートフォン画面上に表示されます。また、アプリ内でLive Viewを選択するとカメラの画像がリアルタイムに見ることができ、アプリ側でシャッターボタンを押すことも可能です。


撮影画像はGALLERYに



4/15 アオバト/大阪城公園/AX VISIO にて



4/15 ムクドリ/大阪城公園/AX VISIO にて



Live View 画面 QR コードで共有します



4/15 アオサギ/大阪城公園/AX VISIO にて

アプリ上で写真のサムネイルを確認することはできますが、写真を拡大するためにはAX VISIO10×32JPNストレージから写真データを端末へインポートする作業が必要です。この際にデータの容量や通信環境により時間がかかる場合がありました。


アオバトの動画


② 野鳥名識別
双眼鏡右側のレンズ上に赤い文字で識別した野鳥名を表示させるモードです。 「SWAROVSKI OPTIK Outdoor」に加えて「Merlrin Bird」をインストールします。この2つのアプリを連携させることにより、野鳥の識別を行います。メニューを鳥マークに合わせ、識別対象を視界の中央にとらえ、決定ボタンを押すと認識されると右側レンズ上に赤文字の英語表示で野鳥名が表示されます。「Merlrin Bird」アプリ側では識別された野鳥名が写真とともに表示されます。こちらは日本語設定すると、日本語名で確認できますのでご安心ください。


左:イメージ写真 右:『Merlrin Bird』画⾯


ただ、識別対象の前に障害物があると識別できないことがありましたので、少しコツがいると感じました。コツをつかむと、野鳥名の答え合わせをしていくようで楽しく使用することできました。

③ 視野の共有
観察対象にマーカーを決定ボタンでセットすると一度視野から外しても、矢印の誘導でマーカー位置まで双眼鏡の視野の中央に導くことができます。

初心者の方や野鳥が見つけにくい場所にいる場合に有効であると感じました。もちろん、対象が移動した場合は自身で導くことが必要です。
今回、AX VISIO10×32JPNの各機能の事前情報は入れずに試用しましたが、上記操作は感覚的にできるため、およそ30分程度で慣れることができました。また、モバイルデータ通信が行えない場所にて使用する場合は「Merlrin Bird」からデータを事前にダウンロードする必要があるため、その場合は事前に準備することをお勧めします。


まとめ

AX VISIO10×32JPNはこんなこともできるのか!と驚きと感動にあふれる試用会でした。スマートフォンと連動させるためのデジタル機器への慣れは必要ですが、AX VISIO10×32JPN本体の操作はいたって簡単です。また、余白を残しているのは他アプリを入れる余裕を残していることです。今後、様々なアプリと連動されることを期待しています。 課題となる点としては、重量感です。カメラ・バッテリー内蔵のため仕方ありませんが、例えば双眼鏡+カメラと三脚を持っていくのと比べるとコンパクトに携帯することはできそうです。また、環境によって変わるかもしれませんがデータの転送速度はもう少し期待したいところです。


監修・協力 :
久下直哉(くげなおや)
バードガイドKUGEオフィス(bird-kuge.com)
1976年生まれ。大阪府在住。
鳥見歴35年/ツアーガイド歴21年

兵庫県立コウノトリの郷公園元飼育員(2000年~2002年)。鳥類標識調査員。日本野鳥の会大阪支部幹事。旅の本棚、モンベルアウトドアチャレンジ、朝日カルチャー中之島教室にてバードガイドを担当している。 西日本を中心とした探鳥地をベースに日本全国幅広くガイドしている。時々、雑誌BIRDERに執筆協力したり、最近では『はじめての野鳥観察』(JTBパブリッシング出版)にて関西の探鳥地案内を一部、執筆。
好きな鳥:ツバメとオオジュリンとコウノトリ
ツアーガイド:
・旅の本棚|初心者でも安心 野鳥ガイドと行く初めてのバードウォッチング(tabihon.jp)
・モンベルアウトドアチャレンジ|バードウォッチング (montbell.jp)
執 筆: はじめての野鳥観察(JTBパブリッシング)

朗報!ASIAIRがビクセンWLに対応しました

ビクセン ワイヤレスユニットとASIAIRの概要と使い方

2024年3月15日、ASIAIRアプリのVer2.1.2が公開され、ASIAIRがビクセンのワイヤレスユニットに正式対応しました。早速、アップデートされたASIAIRとワイヤレスユニットを使って、天体撮影を行ってみましたので、接続方法をご紹介しながら使用感をお伝えします。



ワイヤレスユニットとASIAIRについて

実際の操作に入る前に、ワイヤレスユニットとASIAIRについて簡単にご説明します。

ワイヤレスユニットは、天体望遠鏡メーカーの株式会社ビクセンが開発した、同社赤道儀用のコントローラーユニットです。

赤道儀にワイヤレスユニット(上画像左)を取り付け、スマートフォンやタブレットにスマホアプリ「STARBOOK Wireless(以下「ワイヤレスアプリ」)」をインストールすると、Wifiを使って遠隔で赤道儀を操作することができます。

ASIAIRは、天体撮影用CMOSカメラメーカーのZWO社が開発したスマートWi-Fiデバイスです。同社のカメラやフォーカサー、赤道儀にASIAIR Plus(以下:ASIAIR本体)を接続すると、スマホアプリのASIAIRアプリから、遠隔で接続した機器を操作し、天体撮影や電視観望を行うことができます。

ASIAIRアプリが対応するのは、基本的にZWO社の製品だけですが、赤道儀やカメラに関しては他社製の機材にも対応しており、今回、新たにビクセンのワイヤレスユニットに対応したというわけです。



ワイヤレスユニットとASIAIRの接続方法

ワイヤレスユニットは、従来の同社のコントローラー「STARBOOK TEN」と異なり、Wifiで接続する必要があるため、ASIAIRアプリの架台の一覧からワイヤレスユニットを選択しただけではつながりません。ASIAIRアプリのステーションモードで接続する必要があります。以下、接続方法を、順を追って説明します。

まず、ASIAIRアプリの最新バージョンをアプリストアからダウンロードし、スマートフォンやタブレットにインストールしてください。

ASIAIR本体の電源を入れ、スマホ等の設定画面を開いてASIAIR本体とWifi接続します。その後、ASIAIRアプリを立ち上げると、ファームウェアアップデートが始まりますので、電源を切らずに、しばらく待ちましょう。

アップデート後、ASIAIRアプリを起動すると、架台の一覧にVixen Wireless Unitが追加されているので、それを選択します。

次に、ステーションモードを設定します。ASIAIRアプリ内の電波マーク(ネットワークアイコン)をタップして、ネットワーク設定画面を開きましょう。設定画面が表示されたら、Wi-Fi を選択してください。初期状態では、ステーションモードはオフになっているので、タップしてオンにします。

ステーションモードがオンになると、ASIAIRは接続可能なWiFiネットワークを探しはじめます。しばらく待つと、接続可能なネットワークの中にWireless Unitが表示されるので、それを選択してください。

パスワード入力画面が表示されるので、ワイヤレスユニットのパスワードを入力します。接続に成功すると、接続されたネットワークのSSIDが上の欄に表示され、緑色のチェックマークが入ります。

マウントの一覧でVixen Wireless Unitが選択されているのを確認し、接続ボタンをタップすると、ASIAIRと赤道儀の接続が確立し、下に赤道儀のパラメーターや設定項目が表示されます。



ケーブルレスで快適

ASIAIRとワイヤレスユニットの接続が確立できれば、ケーブル接続の赤道儀と同じように、赤道儀をASIAIRアプリ上で操作することができます。

従来のビクセンSTARBOOK TENコントローラーに比べると、LANケーブルをASIAIR本体に接続する必要がなくなったので、赤道儀周りがすっきりします。子午線を跨いで自動導入するときも、ケーブルが絡まる心配が少なくなり、とても快適に感じました。

赤道儀に天体望遠鏡を載せ、ASIAIRとワイヤレスユニットを使って、数時間、天体撮影を行いましたが、接続は安定していました。ASIAIRアプリを入れたタブレットは、赤道儀から約5m離れた場所に置いていましたが、撮影中、電波が途切れることはありませんでした。



オートガイドについて

ワイヤレスユニットには、SBIG社製オートガイダーに準拠したオートガイド端子が設けられています。

ワイヤレスユニットを使って天体撮影を行う場合、オートガイダーのケーブルをこの端子に接続してオートガイドしていたと思いますが、ASIAIRを使用すると、ASIAIRからWifiを通じて赤道儀に修正信号を送るので、ケーブル接続は不要になります。

実際にオートガイド撮影を行ってみましたが、キャリブレーションからオートガイド開始までスムーズに移行し、撮影中のガイドグラフも上記の通り、安定していました。



STARBOOK WirelessからASIAIRアプリへ

ASIAIRがワイヤレスユニットに対応していなかった時は、ASIAIRアプリを入れたタブレットでZWO社CMOSカメラを制御しつつ、天体を導入するときはワイヤレスアプリを入れたスマホを操作する必要があり、2台のモバイル機器を使わなければいけない点を面倒に感じていました。

そこで、一時はASIAIRを使わず、ワイヤレスユニット用のASCOMドライバーをインストールし、パソコンからCMOSカメラと赤道儀を制御していましたが、遠征先でもパソコンが必要になるのが難点でした。

今回、ASIAIRがワイヤレスユニットに対応したことで、ASIAIRからカメラと赤道儀を制御できるようになり、パソコンや2台のモバイル機器を使い分ける必要がなくなりました。1つのアプリで天体撮影や電視観望を楽しめるようになったのは、大きな進展でしょう。

また、ASIAIRアプリでは、自動導入後にプレートソルビング機能が実行されるので、自動導入の精度も高まります。ワイヤレスアプリで自動導入を行っていた時に比べ、スムーズに撮影に移ることができるようになりました。

CMOSカメラを使用しない天体観望の用途では、ワイヤレスアプリの方が手軽に感じますが、天体撮影や電視観望では、ASIAIRを使う方がストレスも減り、気軽に撮影を楽しめるでしょう。これまでASIAIRを使わず、ワイヤレスユニットで天体撮影を楽しんでいた方にも、ASIAIRを導入するメリットは大きいと思います。



まとめ -ケーブルレスで快適に-

ワイヤレスユニットが発売開始されて以降、ASIAIRの対応を待ち望んだ人は多かったと思います。今回、ようやく正式対応となり、私自身も喜んでいるところです。

実際にこの組み合わせで天体撮影を行ってみたところ、ケーブルレスで赤道儀を使えるのは本当に快適でした。正直なところ、LANケーブルを接続しなければならないSTARBOOK TENにはもう戻れないと感じています。

ワイヤレスユニットとASIAIRの組み合わせは、天体撮影や電視観望を大変便利にしてくれるでしょう。STARBOOK TENユーザーの方も、是非、ワイヤレスユニットとASIAIRを試していただき、ワイヤレスで天体撮影や電子観望を楽しんでみてはいかがでしょうか。


レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。

ハイランダープロミナーとAM3でプレートソルビング自動導入観望を楽しもう!

ハイランダープロミナーとAM3でプレートソルビング自動導入観望を楽しもう!

ハイランダープロミナーとAM3でプレートソルビング自動導入観望を楽しもう!

コーワ ハイランダープロミナー(以下「ハイランダー」)は、スポッティングスコープや双眼鏡で有名な興和オプトロニクス株式会社が製造・販売している大口径の双眼望遠鏡です。生産開始されて20年以上が経ちますが、今でも第一級の性能を持った大口径双眼鏡として人気があります。

今回は、ハイランダーにK-Astec製の保持金具3点セットHLM-3Pを取り付け、AM3赤道儀に載せて天体観望を行いました。ハイランダーの見え味と共に、保持金具の使い勝手についてもご紹介します。



ハイランダー
プロミナー

ZWO
AM3

K-ASTEC
HLM-3P

ASKAR
32mmF4

ZWO
ASI715MC

ZWO
ASI AIR Mini


ハイランダーの概要

ハイランダーの対物レンズの口径は82mmで、星空観察によく使用される口径50mmの双眼鏡と比べて二回り以上大きく、集光力は約2.7倍もあります。双眼鏡本体も大きく、重量は約6kgもあるので、三脚や赤道儀などに固定して観望する必要があります。

対物レンズには、フローライト・クリスタルレンズが採用されています。双眼鏡も大口径になると、色収差などが発生して星像がにじみやすくなりますが、ハイランダーは、フローライトレンズを用いることで、諸収差を良好に補正しています。

接眼部は、45度傾斜しています。ストレートタイプの双眼鏡を星空に向けると、かがみこんで覗きこまないといけませんが、ハイランダーは傾斜型なので楽な姿勢で覗くことができます。また、ピント合わせの方式はIF方式が採用されていて、片眼ずつピントを合わせます。

接眼アイピースは交換式で、標準で32倍ワイドアイピースが付属します。その他、21倍ワイドアイピースと50倍アイピースがオプションで用意されており、様々な対象を楽しめる仕様になっています。

ボディはアルミダイキャスト製で堅牢に作られており、ボディ内部には乾燥窒素ガスが充填されています。防水構造なので、夜露の落ちる夜間でも安心して使用することができます。



ハイランダーの見え味

ハイランダーは天文ファンからの評価が高い大型双眼鏡で、私も何度か覗いてその星像のシャープさに驚いた覚えがあります。今回、改めて星空観望にじっくり使わせていただき、その結像性能の高さを再認識しました。

私は、他社製の口径10センチの3枚玉アポクロマート対空双眼鏡を所有し、星空観望に使用していますが、ハイランダーの星像はそれに比べても鋭く、合焦位置も明瞭で、星が小さく収束します。結像性能が高いため、口径が約2センチ小さいにもかかわらず、解像感はハイランダーの方が優れており、オリオン大星雲のトラペジウムもよく分解しました。


また、同口径の天体望遠鏡と比べても、ハイランダーの方がよく見えると感じました。実際、おおぐま座のM81とM82銀河を口径81㎜のSDアポクロマート屈折望遠鏡で見たときよりも、ハイランダーで覗いた方が銀河のコントラストが良く、背景宇宙から銀河が浮き立って見えました。

見頃を迎えていた、ポンス・ブルックス彗星(12P)もハイランダーで観望することができました。口径4センチ程度の双眼鏡では、彗星の存在がわかる程度でしたが、ハイランダーを使用すると、彗星の核から延びる尾が薄っすらと見えました。観望地でご一緒した星仲間にもハイランダーの見え味は好評で、「大型ドブソニアンよりも彗星の尾がよく見える」と驚いていました。



K-Astec製 保持金具3点セットHLM-3P

HLM-3Pは、ハイランダーを自動導入経緯台などに搭載するための保持金具です。3つの金具が付属していますが、そのうちの2つを同時に使い、アングルモードとストレートモードのどちらかを選んでハイランダーに取り付けます。

今回はAM3赤道儀の経緯台モードを使用するため、アングルモード用の金具2つを使用しました。なお、HLM-3Pに付属するアリガタプレートは3インチ仕様なので、アリミゾ金具の仕様が合えば、AM3以外の赤道儀にも取り付けることができます。

HLM-3Pは、ハイランダーの底部に設けられたカメラネジを介して固定します。ネジ1本での固定は不安に感じましたが、ハイランダー専用設計で作られているためか、ネジ1本でもしっかりと固定でき、緩むことはありませんでした。金具自体の強度も高く、双眼鏡をどの方向に向けてもガタつくこともありませんでした。



AM3赤道儀に載せての観望は快適

ハイランダーをAM3赤道儀に載せて、経緯台モードで星空観望を楽しみました。

経緯台モードの設定方法は、「AM赤道儀の経緯台モードの設定ページ」をご覧いただければと思いますが、一点注意が必要なのは、HLM-3Pをアングルモードで取り付けると、双眼鏡が向く方向が通常とは90度が変わってしまうことです。そのため、事前にAM3赤道儀のアリミゾ金具を一旦外し、90度回して取り付けなおしておきましょう。

また、経緯台モードでは左右のバランスが崩れやすいので、AM赤道儀にバランスシャフトを取り付け、バランスウェイトを載せて安定させましょう。

AM3赤道儀の付属のジョイスティックコントローラーを使って、ハイランダーで天体観望をしたところ、実に快適に天体観望を楽しむことができました。AM3の力強いモーターで、双眼鏡をあっという間に望む方向に向けることができました。

また、ジョイスティックの速度を変更すれば、双眼鏡を覗きながら徐々に視野を動かすこともでき、今まで手動で行っていた時よりも、正確かつスムーズに動かすことができます。これはそれまで経験したことのない感覚で、これだけのためにでも保持金具を使う価値はあると感じました。



プレートソルビングで自動導入

ジョイスティックを使っての天体観望も楽しいですが、位置がわからない暗い天体を探す際は自動導入機能を使うと便利です。AM3赤道儀なら、ASIAIRのプレートソルビング機能を使用すれば、ほぼ完璧に目標天体を導入することができます。

ASIAIRを使うため、HLM-3P金具に開いているネジ穴を利用し、ZWO製のファインダー・シューを介してAskar製の32mm F4ガイドスコープを取り付けました。カメラはZWOのASI715MCを使用しています。

プロミナーとガイドスコープの光軸を合わせた後、タブレットにインストールしたASIAIRアプリから自動導入を実行すると、双眼鏡が目標天体に向かって動き出します。

目的の方向に向いて赤道儀のモーターが止まると、ASI715MCが撮影を開始し、プレートソルビングが行われます。星図との同定が終わり、赤道儀の微動が終了すると、双眼鏡の視野内に入力した天体が導入されていました。

プレートソルビングを使用すると、これまで手動では導入できなかった天体も簡単に視野内に入れることができ、プロミナーで観望を楽しむことができます。是非、プロミナーの性能を最大限発揮できるプレートソルビングも体験してみてください。



まとめ -新感覚の楽しさ-

ハイランダーとAM3赤道儀の組み合わせは、大型双眼鏡での天体観望をとても快適にしてくれました。操作感も良好で、ジョイスティックで赤道儀を自在に動かしていくのは、新しい体験とも呼べるものでした。

20年以上天文ファンに支持されているハイランダーの光学性能はやはり伊達ではなく、色収差の感じられないシャープな像と広い視界は、宇宙への没入感を得られます。星雲星団から彗星の観望まで、幅広い対象を高度に楽しめる双眼鏡でしょう。

ハイランダーは、光学性能を追求した結果、8センチクラスの双眼鏡としては高価ですが、価格に見合う高性能な双眼鏡と言えます。長く使用できる本格的な大型双眼鏡を探している方には、是非お勧めしたい双眼鏡です。




レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。

ポンス・ブルックス彗星を観察しよう



ポンス・ブルックス彗星を観察しよう

ポンス・ブルックス彗星を観察しよう

ポンス・ブルックス彗星(12P /Pons-Brooks)は、約70年で太陽を一周する周期彗星です。2024年4月20日に近日点(太陽に最も近づく時)を迎え、2024年6月2日から3日にかけて地球に近づく予定です。日本から条件良く観察できるのは、3月下旬から4月上旬にかけての時期です。是非、70年振りに見頃を迎える、ポンス・ブルックス彗星を観察してみましょう。



ポンス・ブルックス彗星とは

ポンス・ブルックス彗星は、1812年にフランスの天文学者ポン(ス)によって発見されました。その後、1883年にアメリカの天文学者ブルックスによって再発見され、ポン(ス)が発見した彗星と同一であることが確認されて、2人の名前を冠した周期彗星として登録されました。

ポンス・ブルックス彗星は、約70年をかけて太陽を一周しますが、その公転軌道は、黄道(天球上における太陽の見かけ上の通り道)に対して約74度も傾いており、地球や他の惑星の軌道をほぼ縦に横切るように回っています。



彗星の見える方向は

3月中旬から4月にかけて、ポンス・ブルックス彗星は、日没後の西北西の空に見ることができます。天文薄明終了時(19時半頃)の彗星の高度は、3月15日で約15度です。

その後、彗星は徐々に高度を下げ、3月下旬~4月上旬の高度は10~15度になります。4月中旬以降は10度以下とさらに高度が低くなり、近日点を通過した後は北半球からは見えなくなってしまいます。

上図のようにポンス・ブルックス彗星の高度はかなり低くなるため、西~西北西の方向に障害物がなく、低空までよく見渡せる場所で観察・撮影することをお勧めします。



彗星の明るさは

ポンス・ブルックス彗星が最も明るく見えるのは、彗星が最も太陽に近づく4月21日前後で、明るさは4等級前後と予想されています。しかし、この時期は彗星と太陽の距離が近すぎるため、太陽の光に隠されて彗星を観測することはできません。

ポンス・ブルックス彗星を日本から条件良く観測できるのは、3月下旬から4月上旬にかけてです。その頃には、4~5等級まで明るくなると予想されています。3月25日は満月で夜空が明るいですが、その2~3日後には、彗星の観察時間には月がまだ昇ってこないため、月の影響を受けずに観測することができるようになります。

4月9日が新月ですので、3月下旬から4月上旬にかけてが、ポンス・ブルックス彗星を観測・撮影するのに最も条件の良い時期と言えるでしょう。是非この時期に狙いを定めてポン・ブルックス彗星を観察・撮影してみてください。



双眼鏡を準備しよう

街灯がなく夜空が暗くて星空が綺麗な場所なら、肉眼で6等級の星まで見ることができると言われています。しかし、彗星は恒星と異なり、淡く広がっているため、4等級の明るさがあっても肉眼で見えるかどうかはギリギリのところです。

それに加え、ポンス・ブルックス彗星は太陽に近く、天文薄明中の低空で輝くため、肉眼で見つけるのはかなり難しく、双眼鏡を使用して観察することをお勧めします。

天体望遠鏡で観察することも可能ですが、彗星の観察には、準備の手間がかからず機動力の高い双眼鏡の方が適しています。また、天体望遠鏡と同じく、双眼鏡も口径が大きいほど暗い星まで見えますが、口径が大きいと大きく重くなるため、手持ちの場合は口径4センチ程度の双眼鏡が扱いやすいでしょう。

倍率は10倍前後、見かけ視界が広いタイプの双眼鏡が彗星の観察に使いやすいでしょう。双眼鏡は、彗星だけではなく、星雲や星団の観望にも使えますので、この機会に1つ性能の良い双眼鏡を用意しておくと今後の星空観望にも使えて便利でしょう。



ポンス・ブルックス彗星を撮影してみよう

デジタル一眼レフカメラや天体用CMOSカメラをお持ちなら、ポンス・ブルックス彗星の撮影にもチャレンジしてみてはいかがでしょう。使用する光学系は、焦点距離が短めの屈折望遠鏡や、200ミリ前後のカメラレンズが使いやすいでしょう。望遠鏡とカメラを載せる架台は、設置撤収が素早く行えるポータブル赤道儀や小型赤道儀がお勧めです。

撮影の注意点として、ポンス・ブルックス彗星はすぐに西空に沈んでしまうため、早めに撮影場所に着いて、日没前にセッティングを終えておくことが大切です。また、北極星の位置も前もって確認し、天文薄明が終了したらすぐに撮影に移れるように準備しておきましょう。

彗星は恒星の間を動いていきますが、幸い3月から4月にかけてのポンス・ブルックス彗星は、地球からまだ遠い位置にあるため、移動スピード(固有運動量)は速くありません。200ミリ前後のレンズでも、露光時間に数分かけて、じっくり撮影することができます。



70年ぶりの彗星

周期彗星と言えば、約76年周期で回帰するハレー彗星が有名で、1984年に回帰した時は多くの天文ファンが観望・撮影に盛り上がりました。ポンス・ブルックス彗星が前回回帰したのは、1954年です。1954年と言えば、日本ではちょうど高度経済成長に突入しようという時期で、まだデジタルカメラは存在しておらず、観測精度も現在とは大きな差がありました。

今回の回帰は、初めてデジタルカメラでポンス・ブルックス彗星の姿を捉えることができるチャンスです。この機会を逃すと次の回帰は2095年ですので、今回の回帰がポンス・ブルックス彗星を観察・撮影できるラストチャンスという方がほとんどでしょう。

今秋には、紫金山・アトラス彗星も地球に近づき、明るくなると予想されています。ポンス・ブルックス彗星を観測・撮影しながら、秋の紫金山・アトラス彗星に備えるのも楽しいですね。



著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。

AM3、AM5赤道儀の経緯台モードで天体観望を楽しもう

AM3、AM5赤道儀の経緯台モードで天体観望を楽しもう

軽量コンパクトで人気の高いZWO社のAM3・AM5赤道儀には、経緯台モードが搭載されています。ASIAIRと経緯台モードを使用すれば、プレートソルビング機能を使って、天体観望を今まで以上に手軽に楽しむことができます。

本ページでは、次世代の天体観望方法ともいえるAMシリーズの経緯台モードで天体観望を楽しむ方法をご紹介します。まず最初に、経緯台モードと設定方法について説明します。




Vixen SD81SII鏡筒

ZWO AM3

ASKAR 32mmF4

ZWO ASI715MC

ZWO ASI AIR Mini


【モード設定編】

赤道儀と経緯台の違い

赤道儀は、天体撮影に使用される架台です。回転軸の一つ(赤経軸)を地球の回転軸に合わせるため、日本では赤経軸が約35度傾いています。そのため、初心者の方は動く方向をイメージしにくく、慣れるまで少し時間がかかります。

一方、経緯台は上下方向と水平方向に動きます。カメラ三脚と同じ動きなので、直感的に操作することができ、極軸合わせも不要なため、初めての方でも簡単に天体望遠鏡を希望の方向に向けることができます。また、望遠鏡の接眼部も覗きやすく、天体観望用として愛用されています。



天体観望時は経緯台が便利

赤道儀を使って天体観望を楽しむことも可能ですが、東の天体から西の天体へと子午線を跨いで天体望遠鏡を動かすと、望遠鏡が反転してしまいます。また、望遠鏡を向ける方角によっては接眼部の向きが変わり、アイピースの向きも調整しなければならず、面倒に感じるでしょう。

一方、経緯台を使って観望する場合は、天体望遠鏡は左右と上下にだけ動くため、覗く位置は架台を中心にして回るだけで、望遠鏡の接眼レンズを覗きやすいです。椅子に座りながら観望しやすく、快適に天体観望を楽しむことができます。



AM赤道儀を経緯台として使用するメリット

AM赤道儀とASIAIRとCMOSカメラをセットすれば、自動導入可能な経緯台として使用することができます。プレートソルビング機能も使えるので、視野中心部に希望する天体を確実に導入することができます。

また、観望中の天体をファインダーで捉えてタブレットやスマホの画面で確認することもできます。ファインダーで撮影した画像がモニター画面に表示されるので、天体望遠鏡の実像と見比べるのも楽しいでしょう。

また、AM赤道儀は、元々、撮影用の機材を載せるために設計されているため強度が高く、重い機材を載せることもできます。天体観望ファンにとって強度の高い経緯台は待ち望むものですが、現在市販されている経緯台は強度不足のものが多く、大半は口径8センチ程度までの屈折望遠鏡用です。また操作も手動になります。
その点、AM赤道儀は重い鏡筒も搭載することができ、モーターで目標天体を自動導入してくれます。これらの点を考慮すれば、天体観望用としてもAMシリーズの魅力は高くなるでしょう。



AM赤道儀の経緯台モード

AM赤道儀は、初期状態では赤道儀モードで動くようになっていますので、まず、経緯台モードに設定変更しましょう。以下、AM3赤道儀とASAIR mini、ASI715MCカメラと、Askar 32mm F4 ガイドスコープを使用し、手順を説明します。



赤道儀の極軸体を起こす

まず赤道儀の極軸体を起こして垂直にします。赤道儀横のスリットから見える六角ネジを軽く緩め、極軸体が動くようにしましょう(下図の矢印参照)。また、クランプレバーも少し緩めておきます。

次に、極軸体を南方向にゆっくりと起こします。この時、極軸合わせに使用する上下調整微動ハンドルを、押す方向に回しましょう。極軸体を垂直にしたら、両サイドのクランプレバーを締め、固定しましょう。

なお、経緯台モードは、片側に天体望遠鏡を載せるのでバランスを崩しやすくなります。赤道儀にバランスウェイトシャフトを取り付け、バランスウェイトを付けて安定させることを強くお勧めします。



コントローラーのキャンセルボタン

極軸体を垂直にできたら、赤道儀に電源ケーブルとハンドコントローラーを繋ぎ、ハンドコントローラーのキャンセルボタン(回転マークのボタン)を押しながら、赤道儀の電源ボタンを押します。

しばらくするとビープ音が鳴るので、キャンセルボタンから指を離しましょう。これで、赤道儀の動作モードが赤道儀モードから経緯台モードに変更されました。



経緯台モードの確認

経緯台モードに変更されたかどうかは、ホームポジションの位置で確認することができます。ハンドコントローラーのキャンセルボタンを長押しすると、天体望遠鏡をホームポジションに向けることができますので、ボタンを長押ししてみましょう。

赤道儀が止まり、天体望遠鏡が上や下方向を向いていたら、赤道儀モードのままです。上図のように地面と鏡筒が平行になれば、経緯台モードに切り替わっています。実際の観望に入る前に確認してください。



ASIAIRの取り付けとカメラの接続

経緯台モードへの変更が確認できたら、ASIAIRを取り付けます。経緯台モードでは、水平と垂直方向に架台が回転するので、赤道儀に近い位置に取り付けるのが便利でしょう。

上写真では、赤道儀の架頭部分にASIAIRPRO用アリミゾを取り付け、アリミゾにASIAIR miniを取り付けています。



カメラとガイドスコープ

プレートソルビング機能を使って自動導入補正を行うため、天体望遠鏡のファインダー台座部分に、ガイドスコープを取り付けます。

ガイドスコープの接眼部には、ASI715MCカメラを差し込み、ASIAIR miniとUSBケーブルで接続します。天体観望を行う前にガイドスコープと天体望遠鏡の軸を合わせておくと、スムーズに天体観望に移ることができます。



経緯台モードのセットアップ完了

下の写真は、赤道儀一式のセットアップが完了した様子です。三脚にタブレットホルダーを取り付けてタブレットを固定し、観望しながら操作できるように工夫しました。

実践編では、機材の電源を入れて、実際に操作する様子をご紹介したいと思います。



補足:電源やUSBケーブルについて

経緯台モードでは、目標天体を入力すると赤道儀の水平・垂直軸が高速で回転し、最短距離で自動導入を行います。そのため、様々な天体を観望すると、水平方向に何度も回ることになり、ケーブルが架台に巻き付いていく恐れがあります。
実際、DC電源ケーブルが途中で抜けて、止まってしまったことがありました。モーターの力が強いので、ケーブルが無理に引っ張られると断線する恐れもあります。す。長さに余裕のあるケーブルを使用することをお勧めします。




【実践編】

設定編に続き、AM3・AM5赤道儀の経緯台モードを使って天体観望を楽しむ実践編です。実際に天体を導入し、天体観望を楽しむ方法やコツをご紹介します。今回も、ZWO社のAM3赤道儀、ASIAIR mini、ASI715MCカメラと、Askar社の32mm F4 ガイドスコープを使用しました。



AM赤道儀の電源を入れる

コントローラーのキャンセルボタンを押しながらAM3赤道儀の電源ボタンを押して、電源を入れましょう。キャンセルボタンを押さずに電源ボタンを押すと、赤道儀モードで起動するので、注意してください。



ASIAIR miniの電源を入れる

赤道儀とCMOSカメラをUSBケーブルでASIAIR miniに繋ぎ、DCケーブルを繋いで電源を入れましょう。電源を入れてしばらくすると、ASIAIR miniから「ピー」という音が鳴ります。

音が聞こえたら、タブレットまたはスマートフォンのWifi設定画面を開き、ASIAIR miniを接続します。初期パスワードは、ASIAIR miniのマニュアルに記載されています。

Wifiを接続できたら、ASIAIRアプリを立ち上げます。架台の一覧からAM3を選ぶと、下のようなダイアログボックスが画面に表示されます。

ダイアログボックスには「経緯台モード(Altazimuth Mode)」と表示されています。もし、この画面が表示されない場合は、AM3が赤道儀モードで立ち上がっている可能性があります。一度、赤道儀の電源を切り、設定方法のページをご参照の上、電源を入れ直してください。



CMOSカメラを接続する

ASIAIRアプリのメインカメラのタグを選び、CMOSカメラを接続します。カメラのゲインは、最も感度の高い「High」に合わせておきましょう。

CMOSカメラを取り付けている望遠鏡の焦点距離を入力します。Askarのガイドスコープの焦点距離は128ミリですので、「128」と入力しました。焦点距離が大きくずれると、プレートソルビングに失敗するので、正確に入力しましょう。



ガイドスコープのピント合わせ

CMOSカメラを接続できたら、CMOSカメラを取り付けているガイドスコープのピントを合わせます。既にピントが合っている場合は、この手順を省いてください。

まず、ASIAIRアプリの動作モードをPreview、ビニング4に合わせます。次に、ASIAIRアプリ画面に表示されている赤道儀の操作ボタン(矢印ボタン)を押して、水平になっている天体望遠鏡を観望したい星空の方向に向けます。撮影開始ボタンを押して、CMOSカメラが捉えている星を画面に映し出しましょう。

撮影開始ボタンを押しても、画面が真っ黒で星が全く映し出されない場合は、ピントが大きくずれしまっている可能性が考えられます。ガイドスコープのリングを大きく回し、星がぼんやりと映し出されるまで動かしてみましょう。星の輪郭が画面に表れ、おおよそピントが合ってきたら、動作モードを「Focus」に切り替えて、ピントを追い込みましょう。

今回使用したAskarのガイドスコープの場合、フォーカスリングを5mmほど繰り出したところでピントが合いました。なお、ガイドスコープのピントを合わせる前に自動導入を始めると、プレートソルビング時に星が見つからず、天体の導入に失敗してしまいます。必ずピントを合わせてから自動導入を行いましょう。



望遠鏡とガイドスコープの光軸

天体望遠鏡とガイドスコープの光軸は、事前に地上風景を見ながら合わせておきましょう。Askarのガイドスコープの場合、接眼部にCMOSカメラの代わりにアイピースを挿入すれば、肉眼でも見える像を確認できるので、簡単に合わせることができます。

天体観望を行う時に光軸を合わせることも可能ですが、経緯台モードでは視野内で星が徐々に動いてしまうため、調整が難しく、時間もかかってしまいます。



自動導入を開始

いよいよ自動導入です。ASIAIRアプリの動作モードをPreviewにし、検索ボックスに観望したい天体のナンバーを入力します。天体のナンバーがわからない場合は、右上ボタンを押してTonight’s Bestを選ぶとASIAIRアプリが推奨する天体の一覧が表示されますので、目的の天体を選んでください。

天体を選択して「GoTo」ボタンを押すと、AM3赤道儀が動き始めます。水平方向と垂直方向に高速回転しますが、最初の導入時はアライメントが取れていないため、特に大きく動きます。電源ケーブルやUSBケーブルが機材に巻きついたりしないか、注意して見守りましょう。



プレートソルビング

天体望遠鏡がほぼ目標天体の方向に向くと、CMOSカメラが自動的に星々を撮影し、撮影した画像を用いて、ASIAIRが望遠鏡の向いている方向を解析します。

解析が終了し、望遠鏡が向いている方向の座標が得られると、再び赤道儀が動き始め、目標天体を目指して調整します。さらに1~3回ほど解析が行われ、「Completed」と表示されたら、完了です。天体望遠鏡の視野中心に、目標天体が導入されているでしょう。



望遠鏡で見てみよう

早速、天体望遠鏡を覗いて天体を観望してみましょう。天体にもよりますが、最初は50倍程度の低倍率で見てみましょう。

私が初めて経緯台モードで観望したのは、オリオン大星雲(M42)です。プレートソルビングが完了して望遠鏡を覗くと、見事にM42が視野中央に導入されていて、感動しました。

その後、おおぐま座のM81銀河を導入したところ、AM3赤道儀は南から一気に北方向へ回転し、中心部にM81銀河を捉えました。望遠鏡のアイピースを覗くと、中心部にM81銀河が見え、その斜め上にM82銀河が見えました。二つの銀河は「ハ」の字に並んでいて、しばらく見入ってしまいました。



CMOSカメラの画像も見てみよう

ご自身の目で天体を観望した後は、CMOSカメラが捉えた画像も確認してみましょう。プレートソルビングの解析時にも撮影されているので、既に画像は表示されていると思いますが、改めてPreviewモードの撮影ボタンを押すと、今撮影した画像が表示されます。

画像が暗い場合は、露光時間を延ばせば明るく映し出されます。CMOSカメラの画像で天体の形を確認した後、再び望遠鏡を覗くと、また違った印象を受けるかもしれません。是非何度も見比べてみてください。



倍率も変更してみよう

M42をはじめとする星雲に比べ、春の銀河や惑星状星雲は小さいので、接眼レンズを交換し、倍率を変えて観望してみましょう。倍率を変えると、背景の明るさや星雲の見え方も変わり、興味は尽きません。

また、接眼レンズは様々な種類が販売されていますので、覗き比べるのも楽しいでしょう。同じ倍率でも視界が広かったり狭かったり、見える星の像がシャープだったりぽってりしていたりと様々です。いろいろ見比べて、天体望遠鏡の性能を発揮できる接眼レンズを探しましょう。



様々な天体を導入してみよう

自動導入機能とプレートソルビングを使って、様々な天体を自動導入してみましょう。AM赤道儀とASIAIRを使えば、プレートソルビング機能を活用できるので、ほぼ100%の確率で視野内に導入可能です。

手動では導入が難しいNGC天体や暗い天体も、簡単に導入することができます。さらに鮮明な画像をタブレットやスマホ画面に映したい場合は、口径の大きなガイドスコープを使用すれば、写真の解像度が増します。ユーザーの好みや目的に合わせて様々に楽しめる、天体観望の新しい形ではないでしょうか。



補足:CMOSカメラのフィルターについて

本記事では、ガイドスコープにASI715MCカメラを直接挿入しましたが、ASI715MCカメラは赤外光も通すため、ガイドスコープの収差が強調されて、星像がぽってり映ります。シャープな星像を得たい場合は、カメラに赤外線カットフィルター(IRカットフィルター)を取り付けるとよいでしょう。



レビュー著者
吉田 隆行氏  ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。

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