ZWO 社 ASI 冷却CMOS カメラの乾燥剤の再生方法
ZWO/ASI冷却CMOSカメラ
乾燥剤の再生方法
ZWO 社の冷却CMOS カメラのチャンバー内には、結露を防ぐための乾燥剤が入っていま す。カメラを使用するにつれて除湿性能は徐々に低下していくので、センサーが結露するよ うになったら、乾燥剤の再生を行いましょう。今回は、私のASI2600MCProを例に、乾燥剤の再生手順をご紹介します。
冷却CMOS カメラに乾燥剤が必要な理由
冷たい物体の表面に水蒸気を含んだ空気が触れると、空気の温度は下がります。温度が下がると飽和水蒸気量は減少しますが、湿度が100%以上になると、空気中の水分が凝結して物体の表面上で水滴となります。これが結露現象です。冷たいコップの表面に水滴が付く様子を想像するとわかりやすいと思います。
冷却CMOSカメラの場合、カメラのセンサーやカバーガラスが冷たいコップに相当します。ZWO 社のカメラのカバーガラスには結露防止ヒーターが取り付けられていますが、2 年ほどで乾燥剤の能力が落ちて、結露が発生してしまうようです。私のASI2600MCProの場合は、購入後、約3年で結露が発生しました。 ZWO 社に限らず、他社の冷却CMOS カメラでも、結露防止には乾燥剤がよく用いられています。一部、アルゴンガスをチャンバー内に充填したカメラもありますが、どちらも永久的なものではなく、乾燥剤の再生やガスの再充填が必要です。特に日本は湿度が高いので、結露には注意する必要があります。
晴れた日に屋内で作業しましょう
乾燥剤を交換するには、カメラのチャンバーを開けなければなりません。雨の日や湿度の高い日にチャンバーを開けると、湿度の高い空気が入り込んでしまうので、湿度の低い、天気の良い日を選んで作業しましょう。
また、ほこりやゴミの混入を防ぐため、風のない室内で行いましょう。クリーニングルームが理想ですが、一般家庭にはそのような場所はありません。私は、我が家で最もホコリが少ないと思われる部屋で作業しました。
再生作業に必要なもの
冷却CMOSカメラのチャンバーを開けた際にごみを吹き飛ばすために、カメラの掃除用のエアブローを用意しましょう。また、結露でカバーガラスが汚れている場合のために、無水エタノールとクリーニングペーパーや綿棒なども準備しておくと安心です。
カメラのチャンバーを開く
いよいよ乾燥剤を取り出す作業の開始です。まず、3つのネジ(引きネジ)を緩めて、 ASI2600MCProの前面に取り付けられているチルトプレート(黒色プレート)を外します。 なお、プレートを外す前に、再取り付けの際にプレートの向きがわかるように、カメラとプレートに印を付けておくと安心です。
次に、カメラのフロントピースの6つのネジを緩めましょう。フロントピースは、Oリング で密閉されているので、1つのネジを一気に緩めるのではなく、6本のネジを少しずつ均等 に緩めて外すようにしてください。ネジが外れたら、フロントピースをカメラ本体から慎重 に取り外してください。
乾燥剤を再生させる
フロントピースを外すと、フロントピースのカバーガラスの周りに白い丸いタブレットが 4つ見えると思います。これがチャンバー内の湿度を下げる乾燥剤です。フロントピースか ら4つとも取り外しましょう。
乾燥剤を電子レンジに入れ、500Wで約2分間加熱します。加熱すると乾燥剤に蓄えられて いた水分が蒸発し、乾燥剤が再生します。電子レンジから乾燥剤を取り出し、乾燥剤がまだ 温かいうちにカメラのチャンバー内に戻します。
なお、カメラのセンサーやカバーガラスにホコリや汚れが付着している場合は、乾燥剤を再 生する前に清掃しましょう。清掃方法については、最後の項目でご紹介しています。
チャンバーを再封する
乾燥剤をチャンバー内の所定の位置に戻し、素早くチャンバーを再封します。これは、乾燥 剤が長時間外気に触れて、外気の湿度を吸ってしまうのを防ぐためです。
フロントピースを被せて、6つのネジを締めて再封します。この時、カメラの固定用ネジ穴の内側にO リングがしっかりと入っていることを確認しましょう。また、ヒーターの接点 が接触するように、フロントピースの向きを確認して被せましょう。外すときと同じように、 1つのネジを一気に締めるのではなく、対角の位置のネジを順に少しずつ締めて均等に締め てください。
新しい乾燥剤に交換
乾燥剤の再生を繰り返していると、乾燥剤自体が劣化し、粉末状になってしまいます。劣化すると乾燥剤としての能力も落ち、カメラのセンサーに粉末が付いてしまいますので、新しい乾燥剤タブレットと交換しましょう。
交換の手順は、再生の手順と同じようにチャンバーを開けて、古い乾燥剤と新しいものを交換します。この時、乾燥剤の大きさが、カメラにあらかじめ取り付けられているものと同じであることを確認しましょう。サイズが異なる乾燥剤を無理にねじ込むと、乾燥剤が割れて、センサーにゴミが付着してしまいます。
センサーの清掃
センサーや保護ガラスのゴミが気になるときは、乾燥剤の再生や交換の際に清掃しましょう。
まず、エアブローを使用してゴミを吹き飛ばします。エアブローなら、センサーや保護ガラスに傷や拭きムラをつける心配がありません。ほこりが付いた程度なら、ブローだけで綺麗になると思います。
結露の跡が残っていたり、エアブローだけでは取り切れないゴミが付いている場合は、綿棒やクリーニングペーパーにエタノールをしみこませて、そっと拭き取ります。ガラスや表面を傷つけないよう、できるだけやさしく拭きましょう。
もし、オイルリークが確認できる場合や、あまりにもしつこい汚れが付着して取れない時は、無理にこすらず、販売店に相談した方が安心です。
レビュー著者
吉田 隆行氏 ホームページ「天体写真の世界」
1990年代から銀塩写真でフォトコンテストに名を馳せるようになり、デジタルカメラの時代になってはNHK教育テレビの番組講座や大手カメラメーカーの技術監修を行うなど天体写真家として第一人者。天体望遠鏡を用いた星雲の直焦点撮影はもちろんのこと星景写真から惑星まで広範な撮影技法・撮影対象を網羅。天体撮影機材が銀塩写真からデジタルへと変遷し手法も様変わりする中、自身のホームページで新たな撮影技術を惜しげもなく公開し天体写真趣味の発展に大きく貢献した。弊社HP内では製品テストや、新製品レビュー・撮影ノウハウ記事などの執筆を担当している。