SXD赤道儀インプレッション 1.【撮影のコツ編】

天体写真撮影のコツ

SXD赤道儀+タカハシSKY90望遠鏡

望遠鏡を使った天体写真撮影は、正確に星を追尾する必要があるため、初めて撮影してみるとなかなか上手くいかないものです。でもちょっとした点さえ注意して撮影すれば、撮影の成功率がグンと上がり、天体写真撮影がより楽しくなること請け合いです。天体写真撮影で役立つコツをまとめてみました。


望遠鏡の設置場所に注意

望遠鏡を使った星空の観望でしたら、どんな場所に機材を設置してもあまり問題は起きませんが、写真撮影となると少し注意が必要となってきます。それは天体写真撮影では、何十分(時には何時間)も星を連続して撮影するのです。ですから地面が柔らかかったり、ぐらぐら不安定だと写真撮影中に天体望遠鏡が動いてしまいます。せっかく赤道儀が星をキッチリ追いかけてくれていても、これでは星が流れて写ってしまいます。注意したい点です。

望遠鏡を設置する地面には、コンクリートやアスファルト、土、砂利などいろいろあります。私の経験ではコンクリートが最も安定していました。アスファルトも見た目は硬そうですが、場所によってはひび割れたり、柔らかくなっているところがあるので設置するときは注意が必要です。

望遠鏡の設置場所いろいろ


三脚フラットナーを使おう

特に望遠鏡の接地面が土などの柔らかい地面の場合は、三脚やピラーをそのまま立てると、時間と共に機材が徐々に沈み込んでいってしまいます。このときは三脚フラットナーと呼ばれる、三脚の下敷きを使用するようにしましょう。これを使うと接地面の面積が広がり、安定度が格段に増します。

またフラットナーの中には、アジャスター機能が付いた製品もあります。これを使用すると三脚やピラーの高さを微妙に調整できるようになります。SXD赤道儀の極軸望遠鏡は水平出しは不要ですが、ある程度は水平に保っていた方が機材が安定します。それにいつも架台の水平を確認するようにすれば、北極星の導入がスムーズに行えるようになります(大きく撮影地の緯度が変わらない限り、赤道儀を水平に振るだけで北極星が導入できます)。特に地面が傾いた観測地で撮影される方は、こちらがお勧めでしょう。

三脚フラットナー


バランスを合わせよう

機材を設置し終えたら、必ず赤道儀の赤緯赤経回りのバランスを確認しましょう。下の比較写真でもわかりますが、カメラを付ける前と後では望遠鏡のバランス位置や、バランスウェイトの量などが変わってきます。観望から撮影に移る際には、チェックするようにしましょう。

SXD赤道儀のバランス

バランスが大きく崩れたまま撮影を行うと、星の追尾状態が悪くなり、時には赤道儀がカクッと動いて星が二重に写ったりすることがあります。赤道儀にも悪い影響を与えることがありますから、必ずチェックするようにしましょう。オートガイドを使って追尾するときも、もちろんバランスは重要です。

マッチプレートなどを使って、撮影用鏡筒とガイド鏡を赤道儀に同架するときには、特に赤緯回りのバランスが崩れやすくなります。完全にバランスを合わせることは困難ですが、どちらか一方が極端に重くならないように注意しましょう。 SXD赤道儀用に発売されているビクセンのマッチプレートやKYOEIオリジナルスライディングプレートは、プレートをスライドして赤緯側のバランスを取りやすく作られています。撮影ごとに載せる機材が変わる方は、こういった載せてからバランスを調整できるアイテムを使うのがお勧めです。


極軸合わせは正確に

SXD赤道儀には、赤道儀の赤経軸(中心軸)と天の北極を正確に合わすための極軸望遠鏡が付属しています。観望の時はラフな極軸合わせでかまいませんが、写真撮影の時は極軸合わせは重要です。時間がかかってもできるだけ正確に合わせましょう。

極軸合わせはマニュアルに沿って、リングレベルの水平出し、観測地の経度補正、時刻と日付の設定を行い、極軸望遠鏡の視野内に今現在の北極星の導入位置を表示させます。その後、写真の水平と垂直を調整するレバーを使って北極星を指定位置まで移動させていきます。そして最後に高度を固定するためクランプを締めますが、この時強く締めすぎると、せっかく導入した位置が狂ってしまいます。それほど強く締めなくても問題ありませんので、軽く締めるようにしましょう。

また、このクランプを締めたまま垂直微動ネジを動かそうとすると、ネジが滑って垂直微動ネジのねじ山を舐めてしまうことがあります。垂直微動ネジを動かすときは、かならず高度固定クランプは緩めるようにしましょう。

SXD赤道儀の方位調整ネジ


夜露対策は重要です

冬の満天の星空を見ながらの天体写真撮影はとても寒いものの、一晩中晴れれば撮影結果も楽しみで気持ちのよいものです。でも機材を片づけるときに、撮影に使った望遠鏡やカメラレンズのレンズを見ると『夜露が落ちてレンズが真っ白!今日一晩の撮影の努力が水の泡・・・』ということも天体写真を撮るようになると一度は経験することです。こんなことのないよう、望遠鏡のレンズやカメラレンズには必ずヒーターを巻くようにしましょう。

レンズをヒーターで少し温めておくと、夜露はレンズつかなくなり一晩中クリアな視界で撮影を楽しめます。これは撮影に限ったことでなく、観望の時にも重要なアイテムです。夜露が付いたレンズをそのまま放置しておくと、レンズにカビが生えてしまうこともあります。望遠鏡を長持ちさせる上でも、湿度が高い時には必ず望遠鏡やカメラレンズにヒーターを巻くようにしましょう。

使用するヒーターは12Vバッテリーで動くタイプが便利です。レンズを温めることができればよいので、カイロでもよいのですが、市販のポケットカイロは屋外に放置しておくとすぐに発熱しなくなり、意味をなさなくなります。また熱くなりすぎることもありますので、パワーを調整できる望遠鏡用のヒーターが使いやすいでしょう。

ケンドリックヒーター

▼SXD赤道儀は、SXD2赤道儀に生まれ変わりました。
ビクセン SXD2赤道儀

ビクセン
SXD2マウント

タカハシFSQ-85ED鏡筒 + ビクセンSXD2赤道儀 +
K-ASTECバンド撮影・眼視セット

レビュー著者 吉田隆行氏のサイトはこちら→天体写真の世界

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